Kotobuki Column Vol.1 ~森の音を聴く~

記念すべき第1回目のコラムは、MiMC表参道店に導入する「森の音」の音源を提供いただくC.W.ニコル・アファンの森財団理事長 森田いづみさんにお越しいただき、アファンの森についてお話を伺いました。

北島:
ブランド創業当時から自然由来の素材にこだわり、地球からの恵みこそが人の本来持つ美しさを引き出す、そんなことをモットーにものづくりを続けてきました。
3年前、表参道にFLAGSHIP SHOPをオープンした時は私のものづくりの原点でもある素材を体感していただける店舗として、化粧品の原料であるミネラルやオイルなど見たり触ったり、香りを楽しんでいただけるような場所にしました。
来店したお客様に五感をフルに使っていただきたい!と考えていた時、聴覚に訴えるものがなかなかしっくりくるものが見つからず、そこだけぽっかりと穴が空いていたんですよね。
そんな時に偶然聞いた鳥のさえずりや木々の音、それがアファンの森の音を集めた音源でした。
ありのままの自然のサウンドが疲れた体にスッと入って目をつぶれば自分が森の中にいるように感じられ、なんだか肩の力が抜けて。
都会にありながらも心が安らぐ自然の音に包まれながら商品を見ていただける空間にしたい! そう感じたんです。

対面

*MiMC表参道FLAGSHIP SHOPにて

森田さん:
この音源は実際にアファンの森の音を収録した音源で、森が放つ四季折々の音、風や雨、そこに生きる動物たちの音をそのまま流してます。
アファンの森とは、長野県黒姫にある森で、約40年ほど前にC. W.ニコルが日本の森を再生するために買い取った土地です。当時の日本はバブルの真っ只中で、公共工事やリゾート開発でどんどん山を切り崩していました。
樹齢400年以上の木々なども一瞬にして切り倒され、その代わりにスギやカラマツなどの人工林ばかりになってしまいました。
日本の森林面積は70%近くあるのですが、野生の動植物が生息でき、水や土を作り出す原生林と呼べる森は2%ほどしかないのです。
ニコルが当時よく言っていたのですが、日本は環境自殺をしているって。
原生林は生態系のバランスを保つDNAの銀行みたいなものだから、絶対に無くしてはいけないと。
日本の森を再生したい、そんな思いで森づくりを始めた場所なんです。

森田いづみ様

 森田いづみプロフィール 1956年7月14日 千葉県勝浦市で生まれる。 1984年に、テレビ番組制作およびタレントのマネージメントを手がける㈱サンオフィスに入社。 C.W.ニコルを担当し、マネージメント業務やテレビ番組の企画などを行う。 同氏と一緒に北極やアフリカなどでキャンプ生活を体験。 また、バブル経済による自然破壊の深刻さを憂い、環境保護活動にも積極的に参加し、アファンの森財団設立に関わる。 2008年、サンオフィスから独立し、㈱C.W.ニコルオフィスを設立。 代表取締役社長に就任。 2020年(一財)C.W.ニコル・アファンの森財団の理事長に就任。

北島:
私も友人に里山復活の活動をしている人がいて、C.W.ニコルさんの著書「身体を忘れた日本人」は薦められて読ませていただきました。
森や自然の話をはじめ、食べること、住むこと、意識や言語の話、五感の話などとても興味深く、本当に自然から多くのものをもらっていると感じることができる1冊でした。
MiMCの商品は天然由来原料で作られているのですべて石けんオフができるのですが、石けんや落としたメイクをそのまま海に流したとしても生分解する成分で作られているため、生態系を壊さずに安全な水や海の豊かさを守ることにも繋がります。
地球の循環システムと調和したものづくりができればと常々考えていますが、世の中の大半の商品はそうではない。
一度壊したものを再生するのは容易なことではないですよね。
アファンの森もご苦労されたのではないでしょうか。

北島

森田さん:
初めは地元の林業家の方の力を借りて、荒れ放題だった森の間伐を行い、一本一本に養分が行き渡り日の光が当たるようにしていきました。
そうやってまずはまっすぐな木を育て、風通しを良くして地面まで日光が届くようにすれば、さまざまな花や若木が育ちます。
小鳥たちが巣を作る茂みや、動物たちの好きな実がなる植物は残し、とにかく一つ一つ作っていきました。
ニコルに大変だったでしょ、と聞くことがよくあったのですが、すごく楽しい、と言っていました。森はすごく僕を幸せにしてくれるって。
今では多くの生き物たちが帰ってきました。鳥や昆虫、クマもいます。ニコルはここをノアの方舟にするつもりで作り上げてきたんですよね。命の輪をつないでいけるように。
アファンとは、ニコルの生まれ故郷ウェールズの言葉で“風の通るところ”という意味です。

C.W.ニコル様

 C.W.ニコル / C. W. NICOLプロフィール 作家、環境活動家
1940年生まれ。英国・南ウェールズ出身。作家。(財)C.W.ニコルアファンの森財団創設者
カナダ水産調査局北極生物研究所の技官・環境局の環境問題緊急対策官やエチオピアのシミエン山岳国立公園の公園長など世界各地で環境保護活動を行い、1980年から長野県在住。 95年、日本国籍を取得。 84年から森の再生活動を実践するため、荒れ果てた里山を購入、「アファンの森」と名づける。 2002年、この森での活動や調査などをより公益的に、全国展開をするため財団法人を設立。 2005年、英国エリザベス女王より名誉大英勲章を賜わる。 2016年天皇皇后両陛下がアファンの森をご視察。 著書に「誇り高き日本人でいたい」「マザーツリー」などがある。 2020年4月3日永眠。

北島:
先日ネパールに行ってきたのですが、自然の中での生活で、夜明けと共に起きて、日が沈むと眠くなる、これが本来の人としての習性なのだろうと感じました。
森の中もですが、自然と共にあることで、疲れが取れる感じがします。
東京にいると、よくみんな疲れてるって言いますけど、それは脳の疲れなんじゃないかと思うんですよね。
肉体的な労働をしたわけでもないのに、疲れを感じる。日本に戻ったときに、東京にいながら自然の一部であることを感じて生きることとか、何か伝えられればいいなと思っていたところでした。

自然

*アファンの森:
生物多様性の回復を目指して森づくり進めた結果、今までに絶滅が危惧される動植物70種以上が確認されている。

森田さん:
都会の生活は、生物として一番遠い生活をしていますよね。人と人との距離も近すぎるし、近くのタブレットを何時間も見ているわけですし。ストレスを感じることが多いですよね。
ニコルが日本の人たちに森の再生の次に伝えたいことは、日常生活をもう一度見直すということでした。
彼は常々森には癒しの力があると言っていて、アファンの森でも、森林セラピーをしたり、子どもたちのプログラムを組んだりしています。
ウェールズでは、医者が森の散歩の処方箋を書くそうですよ!成人病とかぜんそくとか 、メンタルなどの病気などもです。
面白いのは人間だけでなく、犬も病気になると森での散歩を処方されていると聞きました。私たちの活動の中でも、エビデンスを取ろうと治験者を募って実験をしたことがあります。
血圧や細胞の数値などを測って、その後森の中でゆっくり2時間くらい散歩してもらう。戻ってから再度数値を測ると、血圧が安定しているんです。高い人は下がって、低い人は上がる。
また脳内疲労は下がって、ナチュラルキラー細胞の数値は見事に上がるんですよね。それは都会に戻っても、2週間くらいは効果が継続するそうです。もともとの人の生活にリセットされるんでしょうね。


北島:
それが本来の人間の姿なんですよね。
時代の流れとともに社会の在り方や生き方が多様化する中、ブランドとしてメイクでのアプローチだけでなく心やライフスタイルにも寄り添い力になれる製品の必要性を改めて感じています。
表参道の店舗でアファンの森の音を聞くことで、一人でも多くの方が癒され、安らげる時間を過ごしていただければと思っています。また、この出会いがアファンの森をより多くの人に知っていただく架け橋になれればと感じています。

*アファンの森URL  https://afan.or.jp/

ツーショット